門をくぐる前には全く見えていませんでした。
時間ギリギリに到着した朝。
汗を拭(ぬぐ)いながらここを通過した時の自分はもしかしたら、何も気づかず、自転車のタイヤで踏みつけていったかもしれません。
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稽古に臨むということは、「いったん俗世から離れて、感覚の世界に深く潜っていく」ようなものです。
稽古を終えて門を出ると、依然変わらない俗世がそこにはあります。しかしどこか、見える世界、感じられる世界がガラリと変わっている、そんな風に思えることがあります。
見えていなかったものに気づく。聞こえていなかった音を拾える。察することができなかった人の気遣いや優しさを悟り、受け取ることができる。
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世界が変わったのではない。自分が変わったのである。
自分が変われば世界は変わる。自分の世界の中心はあく迄(まで)も自分であり、自分以外の誰もが動かせないものなのだ。
自分がこの心を持ちつづける限り、この世界はいささかも変わらない。
何と楽しいことではないか。自分の欲する方向に心を向けさえすれば、欲する如く移り変わる。
人生は素晴らしい。いつも新鮮だ。いつも活き活きしている。
大きな息をしよう。背骨を伸ばそう。
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野口晴哉 著『風声明語』(全生社)より
この写真(↑)を撮るときに初めて気が付いたのですが、狛犬も二基でそれぞれ「阿吽(あうん)の呼吸」の口をしていたのですね。
金剛力士像の「阿形(あぎょう)と吽形(うんぎょう)」だけかと思っていました。
ここでは自分でも「あ…」と発語しながら、そこから生じてくる身体感覚を捉えて動き、撮影してみました。
私たちは、一旦「これが大事だ!」っていう手ごたえを掴んでしまうと、ほかのあらゆる場面においても、一旦つかんだその感覚に、無理やり持っていこうとしてしまいがちです。
たとえば、
「肚(はら)が大事だ!」
「腰が大事だ!」
「丹田が大事だ!」
「みぞおちに穴が開くのが大事だ!」
「ゆるむことが大事だ!」
「引き締まることが大事だ!」
「しずみが大事だ!」
「速度が大事だ!」
「身体集注が大事だ!」
「執着を手放すことが大事だ!」
等々。
「丹田が大事だ!」っていう感覚に唯一絶対の信頼を置いている人がいたとして―。
ある稽古中に、「丹田が出てくる」という感覚を得た瞬間にどうなるか?
「よし、これで大丈夫だ。なぜなら丹田が出てきたから」というところで満足して、その先の展開を追えなくなってしまうかもしれません。
または「丹田らしきもの」を全て「丹田」ということにして片付けてしまい、何の疑いも持たずに浅い集注で終えてしまうかもしれません。
本日の稽古のキーポイントは、一旦捉えた、「一見よさそうな感覚」を敢えて崩してみること。そしてその後に生じてくる新しい感覚を、焦らず静かに、歓待できること。
「何もつかめない」、「わけがわからない」という集注状態に入っている時、私たちは、
「自分は全然集注できていないんじゃないか?」
「みんなが捉えている感覚を、自分だけ理解できていないんじゃないか?」
と不安になりがちです。
不安になると、待つことができずに、自分の馴染みのある「いつもの感覚」にすがろうとして、後戻りしてしまう。そんなことがあるよなあと、稽古の中でしみじみ思いました。
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あとちょっとだけ待てたら、その先の深い集注に潜れたのに―、新たな境地に進めたのに―、自分のよく知っている、自分の庭で全部済ませて、「安全・安心」の浅いプールに足を浸して稽古したつもりになってしまう。
本日の稽古会一日を通して向き合い続けたテーマでしたが、わかったようなわからないような、つかまえられたような、空振りしたような―。
私なりに捉えられた感覚としては、テーブルの上にこぼれた水がサーッと拡がっていくような―、ドアの下の隙間から漏れた冷気がフワーッと地を這って進んでいくような―、そんなようなものでした。
右の写真(↑)では、その感覚が少し伝わるでしょうか?
そんなのがきっと、「佳い稽古」の経験なんでしょうけれども。
と思いながら、閉門後の、人気(ひとけ)のない参道で、私なりに捉えた「低い余韻」の感覚を求めて、撮影動法に勤(いそ)しんでおりました。
いかにその指から、意志を抜いて押せるか。能動の色を出来る限り薄めて、受動的に「押しちゃう」指に持っていけるか。
「成長」という観点からみれば、周囲の通行人の存在が、私の集注する力を育ててくれたと、言えるかもしれません。
「どこに美しさを感じるか」、「何に惹かれるのか」という、いわゆる「好み」が変わってきているように感じました。
「結果として見えるもの」、「作品として残るもの」としての「写真」をテーマに稽古を重ねてきた副産物ですね。「書」を題材とした筆動法も、同じことが言えると思います。


















































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