和歌集

過去の記事でご紹介させていただいた和歌集です。


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子わかれの 松のしつくに 袖ぬれて 昔をしのふ さくらゐのさと

明治天皇『桜井駅跡の石碑』より

かつて、南北朝の戦へと向かう楠木正成(くすのき まさしげ)が、息子の正行(まさつら)と訣別したと言われる旗立て松。葉から落ちるしずくが袖を濡らすように、涙が堪えなかったであろう。数百年を経て、彼らの悲劇に思いを馳せている、ここ桜井の里にて。


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道のべに どくだみの花 かすかにて 咲きあることを われは忘れず

斎藤茂吉(さいとう もきち)『赤光』より

道端に咲くドクダミの花のように、どんなに目立たず、かすかな存在であっても、この大地で確かに咲いているその命のことを、私は決して忘れない。


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いわなければ いけないことを 言うときの どくだみの花 くらやみに浮く

千種創一(ちぐさ そういち)『千夜曳獏(せんやえいばく)』より


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どくだみの 花のにほひを 思ふとき 青みて迫る 君がまなざし

北原白秋(きたはら はくしゅう)『桐の花』より


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見わたせば 山もとかすむ 水無瀬川 夕べは秋と なに思ひけむ

後鳥羽院(ごとばいん)『新古今和歌集』より

見渡してみると、山のふもとが霞(かす)んでいる景色の中に、水無瀬川が流れている。「夕暮れと言えば秋だ」なんて、どうして思っていたのだろうか。こんなにも美しい、春の夕暮れがここにあったのに―。

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浅茅原(あさじはら) つばらつばらに もの思へば 故(ふ)りにし 郷(さと)し 思ほゆるかも 

大伴旅人(おおともの たびと)『万葉集』より

浅茅(背の低いチガヤ)が生えている野原を眺めながら、しみじみとここ(大宰府=福岡県)で物思いにふけっている。かつて過ごした故郷(明日香=奈良県)のことが、何だか思い出されてくるようだ。

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有明の つれなく見えし 別れより 暁ばかり 憂きものはなし

壬生忠岑(みぶの ただみね)『古今和歌集』より(小倉百人一首30番)

空に残る有明の月が、そっけなく見えた。まるであの日のあなたのようだ。あなたと別れたあの朝以来、明け方を迎えることほど、憂鬱なことはない。

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ここにして 家もやいずこ 白雲の たなびく山を 越えてきにけり

石上卿(いそのかみ きょう)『万葉集』より

ここから振り返れば、我が家はどちらの方角になるのだろうか。それさえもわからなくなるほどに、白雲のたなびく、いくつもの山々を越えてきたものだな。

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